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資産状態が良くない(資産状態総合ポイントが最も低い)大学設置者20法人の概要(全国私立大学経営状況の総合比較 14)

3 資産状態総合ポイントの比較

 全国の私立大学設置者(学校法人)約530法人について、内部留保資産比率率と流動比率のデータを総合し、2015~2017年度(前期)及び2018~2020年度(後期)の各期間ごとの資産状態総合ポイントを計算するという独自の方法を取っております。

 計算方法について説明します。


 内部留保資産比率=(運用資産-総負債)÷総資産であり、この比率が高いと運用資産が総負債を大きく上回り内部留保が大きいことになります。比率がマイナスだと運用資産より総負債の方が大きく、内部留保マイナスとなります。運用資産について、2013年改正後の学校法人会計基準では、運用資産=現金預金+特定資産+有価証券としておりますが、改正前は、運用資産=その他の固定資産+流動資産=総資産-有形固定資産と定義していました。貸借対照表で有価証券の額が不明な法人が相当数あるので、本稿では改正前の基準を参考に、運用資産=総資産-有形固定資産=特定資産+その他の固定資産+流動資産の式で計算しています。


 流動比率=流動資産÷流動負債であり、この比率が高いほど法人の短期的な支払い能力が高いことになります。一般に流動比率が低いと資金繰りに窮していると見られます。だが学校法人の場合、流動負債のうち外部負債以外に前受金の占める割合が高く、流動比率が低いから資金繰りに窮しているとは断定できません。


 これら2つの指標の特徴、問題点を考慮し、各法人について各指標ごとに偏差値を計算、その偏差値を総合、合算するという方式(以下の計算式)で資産状態総合ポイントを計算しました。

 資産状態総合ポイント=(内部留保資産比率3年間平均値に基づく偏差値+流動比率3年間平均値に基づく偏差値)÷2

(注)偏差値について外れ値を考慮し、偏差値20未満の場合は20、偏差値80以上の場合は80に固定して計算。


1)資産状態総合ポイントが低い設置者

ア) 資産状態総合ポイント、最小20位以内の設置者(両期間比較)(表23)

 20法人中13法人(黄色で表示)が前期(2015~2017年)、後期(2018~2020年度)共に最小20位以内に入っており、相当数の法人で資産状態総合ポイントはあまり大きな変化がありません。20法人の同ポイント総平均は前期35.2、後期35.0でほとんど差がありません。

 前期、後期共に、日本医科大学、綜芸種智院、東亜大学学園が最小1~3位に入っています。これら20法人に日本医科大学等、医学部及び附属病院を有する法人が幾つか含まれる一方で、小規模な法人も少なくありません。

 必要な教育環境整備や経営拡大のため借金を行えば総負債や流動負債が増加し、内部留保資産比率や流動比率が悪化します。また、経営状態について経常利益率の状況も併せて検討する必要があるので、資産状態総合ポイントのみで経営が悪いか断定することはできません。

 2015~2017年度の方でありあけ国際学園(保健医療経営大学)は、2020年度募集停止になっています。2018~2020年度の方で茶屋四郎次郎学園は、2019年度、大量の留学生の失踪が明らかとなり、経営改善が認められないとして2019~2021年度の私学助成金全面不交付となりましたが、こうした経営体制の問題が資産状態悪化の原因と考えられます。










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