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書評、「カネと暴力の系譜学」「戦国大名の危機管理」

「カネと暴力の系譜学 (シリーズ・道徳の系譜)」河出文庫 萱野 稔人 2006年

 哲学本であるが、難解な用語を用いるのをなるべく避けており読みやすい。暴力と国家に関わる概念論であるが、無理やり特定の事実を引っ張ってきて正当化しようとするようなこともなく好感が持てる。

 社会契約論に対し、税の収奪など国家による暴力が先行したのだと説く。やくざと国家の相違点について論考し、合法的な暴力を有するかが両者の違いとする。そして資本主義の成立について、国家による暴力から派生したものとしている。暴力への権利と富への権利とが未分化だった状態から、後者が独立したのが資本主義ということか。

「戦国大名の危機管理」吉川弘文館  黒田 基樹 2005年

 後北条氏による領国支配の態様から、戦国大名が飢饉に直面した農民の逃亡を防ぐため徳政令など如何なる措置を講じてきたか論じている。農民政策は合戦や同盟等、対外政策とも関係する。

 飢饉というと江戸時代後期の三大飢饉を連想するが、戦国時代まで飢饉が毎年のように発生していたというのには驚いた。また、大名は選銭を禁止し地悪銭も流通できるように仕向けているが、これは大名の物資購入上の必要性からでもある。 従来の戦国大名のイメージを打ち破る本である。

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