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書評 講談社選書メチエ 「知の教科書 ウォーラーステイン」川北稔編

 ウォーラーステインの入門解説書であり、彼の経歴や世界システム論の解説など、全体的には初心者にもわかりやすい。ただ、世界システム論は18世紀頃までは資料、データがそれほど多くないから何とか辻褄合わせできるとしても、現代経済社会を説明するにはかなり無理があるような。  「現代日本とウォーラーステイン」の項を山下範久氏が書いているが、経済学者の間でも疑問視する人が少なくないコンドラチェフ長期波動論を持ち出して、宗教のご託宣のようなシナリオを論じている。特定の要因が結果に及ぼす寄与度はどの程度か、といった実証的検証無くして論じているわけ。  英、米、オランダのヘゲモニーについて、世界システム論者は経済のフロー(GDP等)の面から見ていて、国富等のストックを見ていないんではないだろうか?1945年の段階で日本含む東アジア経済は南アジアやブラジルの経済と同水準にあり、東アジア経済が発展したのは冷戦の最前線として米国の大量援助、投資があったからだと論じている。(P186)  戦前において日本が社会制度含め近代化を行っており、戦後いち早く経済再建するのに役立った社会資本、諸制度、ストックがあったことを軽視しているような。  マルクス経済学の焼き直しのように見えなくもないが、話の種に読んでおけばよいという程度の「知の教科書」である。

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