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著者の脳内世界に存在する「世界システム論」?(書評)

「世界システム論で読む日本」講談社選書メチエ 2003年、山下範久 以前、ウォーラーステインの「知の不確実性」という本を読んだが、何を言いたいのかよくわからなかった。ウォーラーステインの解説書と思って図書館で借りて読んでみたが、こちらもまるで言葉遊びやっているようで、よくわからない。  イワン雷帝期のロシア帝国を対象に近世帝国について論じている部分(P133~135)。ウォーラーステインはロシアが帝国の東方に小麦を流通させており、東方に向いた帝国だったとする。ロシア、東欧史の専門家はロシアから西欧に向けても小麦の輸出があるなど、対西欧交易はロシアにとって重要であり、ロシアは西欧国際政治の中に組み込まれていたと実証的に批判する。  この著者は、「「世界」を閉じさせるのは実体的な交通の有無よりも、理念的な交通の認識である」(P134)、として批判は取るに足らないものとする。なるほど、著者の脳内世界にある「帝国=世界」論かと感じ、読み続ける気が無くなった。  自分の考え方、思想、イデオロギーにとって不都合な実証的指摘、批判は無視し、歴史に対する見方が現実に適合するのか、帰納的、実証的な検証することなく、どんどん演繹で論を展開する、いわゆる陰謀論と似たような手法。実証的な歴史研究者をスケールが小さいと馬鹿にしつつ、脳内世界にしか存在しない「世界システム」を論じているような。

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